ワイヤー送給ありのレーザー溶接 - フィラーの役割
レーザー溶接にワイヤーを送り込むと何が変わるのか。隙間を埋める以外の役割まで含めて整理します。
2026-10-13
フィラーワイヤとは
レーザー溶接は、母材だけを溶かして接合する「自溶接」が基本です。これに対して、溶融池に細いワイヤーを送り込みながら溶接するのが、フィラー(溶加材)ありの溶接です。アーク溶接の溶接棒やワイヤーと同じく、足りない金属を補う役割を担います。
ワイヤーはヘッドに取り付けたノズルから、ビームが当たっている場所へ連続して送られます。送給の速さと溶接速度を合わせて管理することが前提になり、装置の構成や段取りも自溶接とは変わります。導入時は、この管理項目が増えることを織り込んでおく必要があります。アーク溶接の経験がある方なら、溶加材を足すという考え方そのものは馴染みやすいはずです。違いは、熱源が細く速いぶん狙い位置の精度が厳しくなる点にあります。
フィラーが果たす三つの役割
- 隙間や目違いを埋める。金属が不足する部分に材料を足し、へこみや溶け落ちを防ぐ
- ビードの形を整える。余盛をつけて、断面の凹みやアンダーカットを避ける
- 成分を補う・調整する。母材に合った溶加材を選び、溶接金属の性質を整える
とくに三つめは見落とされがちです。母材と同系、または適合する溶加材を使うことで、割れや性質のばらつきを抑える狙いがあります。どの溶加材が適合するかは母材の材質で決まりますので、図面や材料の指定を確認したうえで選定してください。肉盛りができるということは、摩耗した部分の補修にも応用できるということです。用途の幅が広がる一方、条件の管理は自溶接より難しくなります。
難しさはどこにあるか
フィラーありの溶接では、管理する要素が増えます。ビーム・ワイヤー先端・溶融池の三つの位置関係が崩れると、ワイヤーが溶けずに突き刺さる、逆に手前で溶けて玉になる、といった不具合が出ます。ワイヤーの突き出し長さと狙い角度は、条件表に必ず残しておきたい項目です。
送給そのものの安定も重要です。巻き癖やライナーの汚れ、送給ローラーの摩耗が、送りの脈動として溶接結果に現れます。ワイヤー表面の油分や錆も、巣や飛散の原因になります。消耗品の在庫と保管状態まで含めて管理するのが実務です。ワイヤーの径が変われば送給の条件も狙い位置も変わるため、径は安易に変更しないほうが安全です。作業者が替わっても同じ結果が出るよう、段取りを標準化しておくことが重要になります。
自溶接との使い分け
まとめると、隙間をほぼゼロにでき、成分の調整も不要な継手では自溶接がシンプルで速いです。一方、現物合わせで隙間が残る部位、隅肉のように肉付けが欲しい部位、成分の調整が必要な材料ではフィラーが有効です。消耗品の費用と段取り時間が増える点も、判断材料に入れておきましょう。少量多品種であれば段取りの手間が、量産であれば安定性が判断の軸になります。
実際には、治具で隙間を詰める、継手を見直すといった手当てと並べて比較し、コストと手間の折り合う方法を選びます。継手の選び方は溶接継手の基本、レーザー溶接の特徴はレーザー溶接が選ばれる理由をご覧ください。自社の部品でどちらが向くかの検討は、お問い合わせからご相談いただけます。